ナラティブ・アプローチとは

わたしたち一人ひとりが語る言葉には、生きる力があります
ナラティブ・アプローチは、「人を問題でラベリングする」のではなく
その人がどのように物語を紡ぎ、意味づけ、今を生きているのかに耳を傾けます

過去の出来事を「語り直す」ことで、新たな視点が生まれ
自分自身を理解しなおしたり、困難との関係を変化させたりすることができます
私たちはこの実践を通して、支援のあり方・関係のつくり方を問い直していきます

どんな人のためか?

ナラティブ・アプローチは、特定の「困っている人」や「支援が必要な人」だけのためのものではありません
誰もが、自分の経験や思いを語ることによって、新しい理解や回復のきっかけを得ることができます

たとえばこんな方に向いています
• 過去の出来事に意味づけしなおしたい
• 自分の気持ちや生きづらさを言葉にして整理したい
• 支援職・教育職として、対話を大切にする関わり方を深めたい
• 誰かの語りに耳を傾ける力を育てたい
• 心理的な支援をもっと自然なかたちで取り入れたい

ナラティブ・アプローチは、診断や評価よりも「その人らしさ」と「その人の語り」に注目します
だからこそ、年齢や職業、立場を問わず、すべての人に開かれた実践です

語りがもたらす変化

語りとは、単なる情報の伝達ではなく、自分を理解し、他者とつながるための営みです
ナラティブ・アプローチでは、語ることそのものが「変化のプロセス」だと捉えます

語り直しのプロセスは、以下のような変化を生み出します
• 経験を新しい視点でとらえ直し、自分を肯定的に理解できるようになる
• 「問題」中心だった物語から、「生きる力」や「大切にしてきた価値」を見つけ出す
• 他者との関係性が変わり、孤立感や疎外感がやわらぐ
• 支援を受けることが「依存」ではなく、「対話と共同の場」になる
• 日常の中に、気づきと選択の幅が広がっていく

このような変化は、時間をかけてゆっくりと、しかし確実に起こっていきます
わたしたちはそのプロセスを、対話を通してていねいに支えていきます

理論的背景

ナラティブ・アプローチの出発点は、オーストラリアの社会構成主義に基づく実践にあります
とくに、マイケル・ホワイト(Michael White)とデイヴィッド・エプストン(David Epston)によって展開された
ナラティブ・セラピーは、「人の語り」を再構成することを通じて
本人の主体性や希望を取り戻していく支援のあり方を提示しました

この考え方では、人は「自分の語るストーリー」によって自己認識や行動の枠組みを形成しており
その物語には社会や文化、関係性が大きく影響しているとされます
そのため、支援者は「助ける立場」ではなく「ともに語りを再編する伴走者」として関わります

わたしたちは、このナラティブ・アプローチの理論と実践を
心理支援・教育・福祉・医療・組織づくりなど多様な分野に応用しています